装具を外して歩きたい人へ|歩くだけでは治らない脳梗塞後遺症による片麻痺の真実【愛知(名古屋)・三重・岐阜】

Totonoe通信
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石垣貴康|作業療法士/Totonoe代表
病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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結論:歩くことは健康に良い。けれど、「装具を外して歩く」が目標なら、ただ歩くだけでは改善しない(むしろ悪化する)ケースがある。

この記事では、脳梗塞後の片麻痺で

「装具を外したいのに、歩けば歩くほど手がカタくなる」

「麻痺側に体重が乗らない」

などの悩みを抱える方へ、“歩行を分解して積み上げる”という実践戦略をまとめます(名古屋・三重など東海エリアの実情も踏まえて)。

先に安心してほしいこと:この記事は「歩くな」と言う話ではありません。歩行は代謝・血流・心肺機能・気分・睡眠にも良い影響があります。

ただし、目的が“装具を外す”なら、歩行量だけで勝負するとズレる可能性がある——そこを整理します。

はじめに:歩けば治ると思っていたのに…と不安になるあなたへ

脳梗塞・脳出血などの脳卒中後、片麻痺のある方が「装具を外して歩きたい」と願うのは、ごく自然です。

ところが現実には、こんな矛盾が起きます。

  • 歩けば歩くほど、麻痺側に体重が乗らず、歩き方が“非麻痺側頼み”になっていく
  • 歩行後に、手が握り込む・腕が曲がる・肩が上がるなど緊張が増える
  • 「頑張ってるのに変わらない」「むしろ悪化している気がする」と感じる

これは努力不足ではなく、訓練の“順番”と“設計”の問題であることが多いです。

「歩けば治る」は半分正解、半分まちがい

歩行は、廃用性筋萎縮の予防、血圧・血糖の改善、心肺持久力の維持、気分の改善、生活活動性(ADL/IADL)の維持などに役立ちます。

だから「歩けるなら歩く」は大切。ここは否定しません。

ただし、片麻痺で“装具を外す=麻痺側で支える能力を育てる”ことが目的の場合、歩行だけに偏ると、次の落とし穴が生まれます。

なぜ“装具をつけて歩くだけ”では装具を外せないのか?

① 麻痺側に体重が乗らないまま歩けてしまう

装具は安全を高めます。ですが同時に、麻痺側に十分な荷重をしなくても前進できる状態を作ります。

結果として、歩数や歩行距離は増えても、麻痺側の支持・荷重・体幹制御が育たないまま固定化しやすいのです。

よくある観察ポイント(セルフチェック)

  • 歩行中、麻痺側に乗る瞬間が短い/怖い
  • 麻痺側の足裏(特に踵〜母趾球)で床を捉える感覚が薄い
  • 非麻痺側の一歩が大きく、麻痺側は“追いつく”ように出ている
  • 鏡で見ると、骨盤や体幹が大きく傾く(側方偏位)

② 代償歩行がクセになり、歩けば歩くほど手がカタくなる

片麻痺歩行では、転倒回避のために体が無意識に代償を選びます。

代償は“必要悪”でもありますが、量が増えすぎると問題になります。

  • 肩がすくむ・肘が曲がる・手が握り込む(上肢の過緊張)
  • 体幹が固まる(回旋が消える)
  • 骨盤が左右に揺れる/反張膝/つま先の引っかかり
  • 足部が内反しやすい(足首〜足趾の感覚が入りにくい)

この状態で「量」だけ増やすと、過緊張→代償→さらに過緊張というループに入り、歩行後に手がカタくなる方がいます。

③ 誤学習:脳が“間違った歩き方”を正解として覚える

脳は繰り返した運動パターンを学習します。つまり、

  • 麻痺側に乗らない
  • 非麻痺側だけで支える
  • 体幹を固めて振り回す

…この“歩けてしまう”パターンを繰り返すほど、その歩き方が固定化しやすくなります。

大事な前提:歩くな、ではなく「歩き方の設計を変えよう」

歩かないより歩いた方がいい。これは本当です。

ただ、装具を外す目的に近づくには、歩行を分解して、難易度を下げながら麻痺側に“正しい刺激”を入れる必要があります。

ここで必要なのが「分解力」:歩行は“最終形”

装具を外すには、歩行を構成する要素をバラして、順に積み上げた方が早いことが多い。

要素① 立つ(両脚支持)

要素② 麻痺側に荷重できる(左右移動)

要素③ 麻痺側で支持できる(片脚支持の入口)

要素④ 足を出す(ステップ)

要素⑤ 体幹・骨盤が安定したまま前進できる(統合)

装具を外すためのロードマップ:分解→積み上げの順番

基本は「安全を確保しつつ、装具なし要素を少しずつ混ぜる」です。

ステップ0:安全設計(転倒予防)

  • 練習は壁・手すり・テーブルの近くで(“触れられる距離”)
  • 床は滑りにくい靴・靴下(裸足で滑るなら靴下は変更)
  • 疲れている日に無理をしない(疲労で代償が増える)
  • 痛み(膝・股関節・腰)がある日は負荷を落とす

※転倒リスクが高い方、骨粗鬆症や既往のある方は、主治医・担当療法士の指示に従ってください。

ステップ1:装具なしで「立ち座り」を整える(最重要)

立ち上がりと着座は歩行の土台で、かつ自宅で反復しやすい“最強の訓練”です。

立ち座りのポイント

  • 座る位置は浅すぎない(骨盤が倒れると代償が増える)
  • 麻痺側の足を“遠くに置きすぎない”(乗れなくなる)
  • 立つ瞬間、麻痺側の足裏に「圧」を感じる
  • 立った後に非麻痺側へ体が逃げない

回数の目安:まずは1日5回×2セット。質を優先し、疲れて代償が出るなら回数を減らします。

ステップ2:装具なしで「立位バランス」—麻痺側に“乗る練習”

  • 左右へゆっくり重心移動(麻痺側に寄せて2秒キープ)
  • 前後への微小移動(踵〜母趾球の圧の変化を感じる)
  • 麻痺側へ乗ったまま、深呼吸(緊張を下げる)

ステップ3:ステップ練習(手すりつき)—歩行の最小単位を作る

  1. 麻痺側の足を“ほんの少し”前へ(出しすぎない)
  2. 体重を麻痺側へ預ける(2秒)
  3. 非麻痺側をそっと揃える

歩数ではなく、荷重の“質”を増やします。

ステップ4:装具なし短距離歩行(成功条件を揃える)

  • 直線・平坦・障害物なし
  • 最初は3歩〜5歩だけ
  • ゆっくり、麻痺側に乗る“間”を作る
  • 疲れたら終了(疲労で代償が増える)

「歩くだけで悪化した気がする」人がやりがちな3つの落とし穴

落とし穴①:スピードでごまかす

速く歩くと勢いで前に進めますが、麻痺側荷重がさらに抜ける人もいます。装具を外したいなら、まずはゆっくりで荷重時間を作る。

落とし穴②:疲労しても続ける

疲れるほど代償は増えます。短時間×高頻度が基本です。

落とし穴③:麻痺側を意識しすぎて固める

力むほど、体幹や上肢が固まり、手がカタくなる方がいます。呼吸を整え、ゆっくり、少しだけがコツです。

内反・足首のこわばりが強い人へ:歩く前の“感覚入力”

おすすめの順番(3分)

  1. 足底を手のひらでさする(踵→母趾球→小趾球)
  2. 足趾を一本ずつ軽く動かす
  3. 足首周囲を温めるように摩擦
  4. 立って、足裏の圧を感じる(10秒×3)

名古屋・三重・岐阜で増えている「リハビリ難民」—退院後に困る理由

  • 外来リハビリの回数・時間が限られる
  • 介護保険サービスは“生活支援”が中心になりやすい
  • 「装具を外す」など機能改善の目標が後回しになりがち
  • 相談先が分からず、情報が断片的

愛知・三重・岐阜など東海エリアでも、同様の相談は増えています。

Totonoe-整-の哲学:不調を“機能”で整える(生活24時間の設計)

  • 人:身体機能・感覚・認知・運動学習
  • 環境:住環境、動線、福祉用具、転倒予防
  • 習慣:座り方・立ち方・歩き方・休み方
  • 管理:目標設定、記録、負荷調整、継続

今日からできる「分解リハ」ミニメニュー(自宅版)

1日10分でOK(例)

  1. 足底の感覚入力:1分
  2. 立ち座り:5回
  3. 立位で左右重心移動:左右10回
  4. 手すりステップ:左右10回

※痛みやふらつきが強い日は中止。安全第一で。

よくある質問(FAQ)

Q1. 装具は使い続けてもいい?

A. はい。装具は転倒や関節保護に重要です。ポイントは「使う場面」と「外す練習」を分けることです。

Q2. どれくらいで装具を外せる?

A. 個人差が大きく期間の断言はできません。ただ、分解して積み上げることで装具の軽量化・使用時間の短縮など“段階的変化”は狙えます。

Q3. 歩くほど手が固くなる時は?

A. 代償や過緊張が増えているサインです。スピードを落とす/回数を減らす/呼吸を整える/分解練習に戻すを優先してください。

まとめ:「ただ歩く」から「歩ける状態を作る」へ

  • まず立ち座り(麻痺側に乗る入口)
  • 次に立位バランス(荷重時間を増やす)
  • 次にステップ(歩行の最小単位)
  • 最後に短距離歩行(成功条件を揃える)

次の一歩:「いまの歩き方が合っているか不安」「麻痺側にどう乗ればいいか分からない」場合は、歩行を“見て”、分解して、生活に落とし込むのが近道です。


注意:本記事は一般的情報であり、診断や治療の代替ではありません。痛み・転倒リスク・合併症がある場合は主治医・担当療法士に相談してください。

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病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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