はじめに|頑張っているのに変わらない…と感じているあなたへ
「退院後も、毎日リハビリを頑張っている」
「自主トレも欠かさずやっている」
「でも、思ったほど動きや生活が良くならない」
脳梗塞後遺症を抱える方やご家族から、こうした悩みは非常によく聞かれます。
実際、WEBでは次のような言葉が多く検索されています。
この記事は、「怠けている人」ではなく
本気で良くなりたい人のために書いています。
まず整理しておきたい前提|「回復」と「改善」は同じではありません
病院や保険内リハビリでは、医学的な意味で「回復」という言葉が使われます。
- 急性期・回復期での機能回復
- 麻痺や障害からの医学的回復
一方、退院後・生活期・保険外リハビリで目指すのは「改善」です。
- 動作が楽になる
- 生活がしやすくなる
- 疲れにくくなる
- 不安が減る
Totonoeが扱っているのは、この「改善」の領域です。
結論|脳梗塞後の改善は「リハビリ量」では決まりません
はっきり言います。
改善は、頑張った量では起こりません。
改善を左右するのは、次の要素です。
- 脳と神経が学習しやすい負荷
- 動作の質
- 休息と回復
- 1日のうち残り23時間の過ごし方
これらが整ったときに、初めて変化が積み重なります。
脳梗塞後の身体は「脳」で変わる
神経可塑性という前提
脳梗塞後の改善の土台にあるのが、神経可塑性です。
脳は、
- 正確な動作
- 適切な難易度
- 過剰でない反復
によって再編成されていきます。
Langhorneら(Lancet, 2011)は、脳卒中後の機能変化には
task-specific training(課題特異的訓練)が重要であり、
単なる反復量ではないことを示しています。
なぜ「量を頑張るほど改善しない」のか
エビデンス①|疲労下の反復は学習効率を下げる
Krakauerら(2012)は、疲労状態での反復練習は
運動学習効率を低下させると報告しています。
疲れ切った状態・集中力が落ちた状態での自主トレは、
改善を促すどころか、誤った動作を脳に学習させるリスク
を高めてしまいます。
エビデンス②|代償動作の固定化
量を優先すると、健側に頼る動きや崩れた姿勢が強化されやすくなります。
Taubらの研究で知られるlearned non-use(学習性不使用)は、
「頑張っているのに改善しない」人に非常に多く見られます。
「無理してでも越えろ」が危険な理由
Whyteら(2005)のchallenge point frameworkでは、
- 簡単すぎる → 学習しない
- 難しすぎる → 混乱・非効率
と示されています。
無理は挑戦ではなく、神経学的ノイズになります。
改善が伸び悩む人に共通する特徴
これは努力不足ではありません。
改善設計がされていないだけです。
改善を判断する指標は「生活」
これらは、改善が進んでいるサインです。
見落とされがちな「23時間」
リハビリの時間は、1日のほんの一部です。
残りの23時間の
座り方・寝方・家具配置・動線・生活リズムが、改善を大きく左右します。
Totonoeが大切にしている視点
運動量を増やすのではなく、改善しやすい状態を整える。
まとめ|脳梗塞後に改善していく人とは
一番頑張った人ではありません。
一番動いた人でもありません。
脳に合った負荷と生活を、壊れない形で整えた人です。
脳梗塞後の人生は、リハビリで終わりではありません。
改善の余地は、生活の中にまだ残っています。


