頑張っているのに回復しない…脳卒中後遺症・片麻痺の人に“努力不足”と言えない理由

Totonoe通信
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石垣貴康|作業療法士/Totonoe代表
病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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脳梗塞や脳出血など、脳卒中後遺症による片麻痺。

この領域で長く臨床に関わっていると、SNSや書籍で語られる「治る・治らない論」に、どうしても違和感を覚えることがあります。

最近、医師である 内海聡 先生の投稿が話題になりました。
内容を要約すると、

  • 「どうやって治したらいいですか?」と聞く人は治らない
  • 質問する行為は依存である
  • 病名にこだわる人は治らない
  • 本当に治る人は、すでに自分で学び、行動している

という、かなり強いメッセージです。

この主張を読んで、
「なるほど」と感じる部分と、
「それを脳卒中片麻痺に当てはめていいのか?」
と感じる部分が、正直どちらもありました。

この記事では、
脳卒中後遺症による片麻痺の人と日々向き合ってきた作業療法士・石垣の視点から、
内海先生の主張をどう受け止め、どう整理するかを言語化します。

内海聡先生の主張の「本質」はどこにあるのか

まず大切なのは、
内海先生の言葉をそのまま表面で受け取らないことだと思いました。

先生が繰り返し指摘しているのは、
治療法そのものではなく、

  • 他人任せの姿勢
  • 病名に依存した思考
  • 楽に解決策を得ようとする態度

といった「姿勢・スタンス」の問題です。

慢性疾患や生活習慣病の領域では、
この指摘が刺さるケースが多いのも事実でしょう。

では、
脳卒中後遺症による片麻痺ではどうなのか。

脳卒中後遺症の片麻痺は「思想」では治らない

ここは、臨床家としてはっきり伝えたいところです。

脳卒中による片麻痺は、

  • 脳血管障害による器質的損傷
  • 損傷部位・範囲・重症度が明確
  • 発症からの時間経過(急性期・回復期・慢性期)が回復に影響

という、医学的・神経学的制約を強く受けます。

つまり、

どれだけ前向きでも
どれだけ学んでも
どれだけ努力しても

完全に元通りにならない人はいます。

これは
「努力していないから」
「学びが足りないから」
ではありません。

死んでしまった細胞は元に戻らない
これは科学的事実です。

この点で、
「治らない人=努力していない」
という構図を、片麻痺にそのまま当てはめることには、
大きな危うさを感じます。

そして、脳には可塑性があります

それでも内海先生の言葉が「活きる瞬間」もある

ただし、
「だから全部間違っている」と切り捨てたいわけではありません。

片麻痺のリハビリ現場でも、
確かにこんな差はあります。

① 受け身の人と、主体的な人の差

  • 「先生、治してください」
  • 「正解の運動を教えてください」

という人と、

  • 自分の身体の変化を観察する
  • 日常動作の中で試行錯誤する
  • 失敗も含めて学習する

人では、
回復の質・生活適応力に差が出やすいのは事実です。

これは精神論ではなく、
運動学習・神経可塑性の観点からも説明できます。

② 「病名=自分」になったとき、回復は止まりやすい

臨床でよく聞く言葉があります。

  • 「片麻痺だからできない」
  • 「脳卒中だから仕方ない」

この思考が固定化すると、

  • 活動量が減る
  • 非麻痺側への依存が強まる
  • 学習性不使用が進む

という悪循環に入りやすくなります。

この意味では、
内海先生の言う
「病名を印籠のように使う人は治らない」
という表現は、一部重なる側面があると感じています。

石垣的な結論:問題は「依存」か「医療」か、ではない

私が臨床を通してたどり着いた結論は、とてもシンプルです。

脳卒中後遺症による片麻痺は
医療を否定してもダメ
依存に傾いてもダメ

必要なのは、

  • 医学的評価
  • 脳科学に基づくリハビリ
  • 生活環境・動作・習慣の再設計
  • そして「自分で関わる余地」を残すこと

このバランス設計です。

「治す責任」を一人に押し付けないことが、回復を支える

片麻痺の人にとって一番つらいのは、

  • 頑張っても思うように動かない
  • 周囲と比べて落ち込む
  • 「努力が足りない」と言われること

です。

改善とは、

  • 機能が戻ること
  • 生活が再構築されること
  • 自分の身体と折り合いをつけられること

このどれもが含まれるプロセスだと、私は考えています

まとめ|内海聡先生の言葉をどう受け取るか

  • 内海聡先生の主張は
     👉 「姿勢論」としては示唆がある
  • しかし
     👉 脳卒中後遺症・片麻痺の回復論としては適用できない
  • 片麻痺は
     👉 医療 × リハビリ × 主体性 × 生活設計
     👉 その人の人生全体を見て初めて語れるもの

もしあなたが、
「頑張っているのに回復しない」
自分の努力が足りないのではと責めている」
そんな思いを抱えているなら。

それは、
あなたが怠けているからではありません。

身体と脳、そして生活を
どう設計し直すか
そこに、改善の現実的なヒントがあります。

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石垣貴康|作業療法士/Totonoe代表
病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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