片麻痺は改善しない?痙縮と代償運動を変える自主リハビリと脳の再学習のコツ

Totonoe通信
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石垣貴康|作業療法士/Totonoe代表
病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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片麻痺は改善しないという思い込みについて

退院すると「もう改善は頭打ちです」と言われることがあります。
しかし近年の脳科学は、成人になっても脳は学習し続けること(脳の可塑性)を示しています。
つまり「もう変わらない」は科学的根拠ではなく、昔からの前提にすぎません。

痙縮とは何か

痙縮とは、麻痺側の筋肉に勝手に力が入りやすい状態のことです。
筋肉が悪いのではなく、脳から筋肉への指令の調整がうまくいっていないために起こります。

力が抜けない、勝手に内側に引き込まれる、動かすと余計に固くなるなどの症状がみられます。

代償運動とは何か

代償運動とは、麻痺している部位が正しく使えないために、別の部位が頑張ってしまう動きのことです。

足がぶん回る、体が傾く、麻痺側に体重が乗らないなどが典型的です。

つまり本人は頑張っているのに、脳が別の動きを学習してしまい、それが固定されてしまうことがあります。

片麻痺の改善は筋トレではなく脳の再学習

重要なのは筋肉を鍛えることではなく、脳が正しい運動を学び直すことです。

脳卒中後の回復は、脳が成功体験を積むほど進むと言われています。

つまり、正しい条件で動かすこと=脳が学習しやすい環境を作ることが最優先です。

自主リハビリがなぜ効果的なのか

人に動かしてもらうだけでは、脳の回路が十分に変化しません。

自分の意思で動かそうとする経験が、脳の再学習を最も強く促します。

つまり、主体的に動かすことが回復の鍵になります。

慢性期でも何年経っても変化は起きる

脳可塑性は半年で終わるわけではありません。
10年以上経過してから改善した例も多数あります。

年数ではなく、学習できる環境があるかどうかが回復を左右します。

ただ歩けば良いわけではない理由

歩くこと自体は良いことですが、以下の条件が整っていないと誤学習が進みます。

  • 麻痺側に体重が乗っていない
  • ぶん回しが出ている
  • 体が傾いている

条件が悪いまま練習すると代償が固定し、かえって回復が遅れることがあります。

明日からできる自主リハビリのステップ

ステップ1 力を抜く時間を作る

呼吸、ゆっくり触る、関節を優しく動かすなど、痙縮が落ち着く準備を行います。

ステップ2 小さい動きで成功させる

1cmでも良いので「動いた」と脳が感じることが重要です。

ステップ3 できたという感覚を意識する

脳は成功体験の回数で学習します。
「今、少し楽に動けた」「さっきよりスムーズだった」と感じられたかを意識します。

ステップ4 歩行は条件が整ってから

麻痺側に体重がのる感覚が確認できてから歩くと、誤学習を防げます。
「ただ歩く」のではなく、「条件を整えてから歩く」ことがポイントです。

ステップ5 短時間で良いので毎日続ける

2〜5分で十分です。
長くやるより、短くても毎日続く方が脳の再学習には効果的です。

代償運動が減っているかのチェックポイント

次のような変化が出ているかを確認してみてください。

  • 麻痺側に体重がのっている時間が増えた
  • 力みが減ってきた、手足が少し柔らかく感じる
  • ぶん回しが少し減った、歩きやすくなった
  • 歩いた後の疲れ方が変わった、だるさが減った
  • 「今日は調子が良い」と感じる日が少し増えてきた

これらの小さな変化は、脳が変化しているサインです。

自主リハのチェックリスト

次の項目を、できているかどうか確認してみましょう。

  • 動かす前に、力を抜く時間を取れている
  • 大きな動きではなく、小さな成功を積み重ねている
  • 毎日2〜5分でも途切れず続けている
  • 歩く前に、麻痺側への荷重やぶん回しを確認している
  • 「楽に動けた瞬間」に気づけている

YESが増えるほど、脳の再学習は加速していきます。

痙縮を悪化させるNG行動

痙縮は、力の入れ方や疲れ方によって悪化することがあります。次の行動には注意してください。

NG1 力むまで無理する

「頑張りすぎ」は力みを生み、痙縮を強めます。

NG2 痛みを我慢して動かす

痛みは脳にとってストレス刺激になり、筋緊張を高めます。

NG3 疲れるまで歩き続ける

疲労が強い状態での歩行は、代償運動を固定してしまうことがあります。

NG4 一気に大きく動かそうとする

大きな動きが出ない時こそ、小さな動きの成功を積み重ねる方が脳の再学習には効果的です。

NG5 力を抜く準備をしない

痙縮は「勝手な力み」です。動かす前に力を抜く時間を取らないと、常にスタート地点が不利な状態になります。

自宅で整えるべき環境

脳の学習は、病院だけでなく自宅の環境にも強く影響を受けます。床、靴、寝方を見直すだけでも動きが変わることがあります。

ツルツルした床は滑りやすく、バランスを崩しやすくなります。
その結果、ぶん回しや体の傾きなどの代償運動が強く出やすくなります。

滑り止めマットを敷く、必要に応じて裸足や滑りにくい靴下を使うなど、足裏の感覚が安定する工夫がおすすめです。

底が柔らかすぎる靴は、一見楽に感じますが、ふらつきやぶん回しを助長することがあります。

かかとがしっかりしていて、底に適度な硬さのある靴を選ぶと、足首や膝、股関節の動きが安定しやすくなります。

寝方

体がねじれた姿勢で長時間寝ると、筋肉や関節に負担がかかり、痙縮や痛みを強める要因になります。

仰向けか横向きで体幹がまっすぐになる姿勢を心がけ、足が内側に引き込まれやすい方は、足を軽く外側に開く工夫をすると楽になることがあります。

生活こそ最大のリハビリになる

リハビリは「病院の中だけ」で行うものではなく、日々の生活そのものがリハビリの場になります。

床、靴、寝方、座り方といった環境が整うだけで、痙縮や代償運動のクセが変わりやすくなり、脳が正しい動きを学び直すチャンスが増えます。

最後に

痙縮が強くても、代償が長く続いていても、年数が経っていても、脳は学び続ける力を持っています。

どれだけ小さな動きでも、「できた」という成功の積み重ねが、最も大きな回復を生み出します。

今日からできる一歩を、ぜひ始めてみてください。

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石垣貴康|作業療法士/Totonoe代表
病院で良くなっていたのに、自宅に戻るとまた動きにくくなる──そんな“リハビリの壁”に直面する方を多く出会ってきました。原因は努力不足ではなく、生活環境・習慣・動作のクセ・生活リズムです。私は「機能は生活からつくられる」という視点で、寝たきり・片麻痺・脊髄損傷・神経難病など重度の方へ、生活24時間を整える訪問パーソナルリハビリを提供しています。
「もう良くならない」と感じても、まだ方法は残っている可能性があります。一緒に、“もう一度動ける人生”を取り戻しましょう。

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